1. 古文が苦手な生徒たちへ
「古文って、なんでこんなに難しいんだろう」
授業のあとにこぼれる生徒たちのそんな声を、何度も耳にしてきました。
現代の言葉と違って、古文には馴染みのない表現や言い回しが多く、文章を読んでも「結局、何が書いてあるのか分からない」という状態になりがちです。さらに、登場人物がたくさん出てきて、しかも皆が似たような名前だったり敬称で呼ばれていたりするので、人間関係もごちゃごちゃしてしまいます。
「読もうとしても、頭に入ってこない」「登場人物の誰が誰だか分からなくなる」――こうした理由から、古文を苦手と感じる生徒が多いのも無理はありません。
でも、だからこそ、もっと楽しく・分かりやすく古文に触れられる方法があれば、苦手意識を少しずつ減らしていけるのではないかと思うのです。
2. 漫画が助けになるかもしれません
そんなとき、ヒントになったのが、学習漫画『ドラゴン桜』で紹介されていた勉強法です。東大を目指す高校生たちが、源氏物語を学ぶ際に使っていたのが『あさきゆめみし』という漫画でした。
源氏物語のストーリーを、美しい絵とともに漫画で描いている作品で、登場人物の表情や感情、背景まで視覚的に分かるようになっています。文章だけではつかみにくい関係性や出来事の流れが、漫画なら一目で伝わってくるのです。
「なるほど、こうすれば物語の全体像がつかめるんだ」と納得しました。漫画には、読む人を物語に引き込む力があります。特に古文のように、時代も文化も違う世界を描いた作品では、絵の力がとても大きな助けになります。
古典の世界に入っていく「入り口」として、漫画はとても心強いツールになってくれるのではないでしょうか。
3. でも、『あさきゆめみし』もハードルが高い?
『あさきゆめみし』は、源氏物語の世界を丁寧に描いた素晴らしい作品です。登場人物の表情や衣装、背景の描写も細かく、読むことで平安時代の空気に触れることができます。
ただ、実際に読んでみると、「絵がきれいだけど、話が難しい…」という声が上がることも少なくありません。特に、ふだんあまり漫画を読まない生徒にとっては、登場人物の数が多く、時代背景もなじみがなくて、やはり「よくわからない」と感じてしまうようです。
また、セリフやナレーションには古文の表現が残っていたり、独特の言い回しが使われていたりして、読むのに少しコツがいります。つまり、古文の入門書としてはとても良い教材ですが、それなりの読解力や集中力が求められるのも事実なのです。
いきなりこの作品から入ると、「やっぱり古文は難しい」という印象をさらに強めてしまうかもしれません。だからこそ、無理なく段階を踏んで、「読む力」を少しずつ育てていくことが大切だと思うのです。
4. まずは「漫画を読む力」から育てていく
『あさきゆめみし』をスムーズに楽しむためには、ある程度「漫画を読む力」が必要です。人物の感情を絵やセリフから読み取ったり、場面の変化や背景に気づいたりする力です。これは意識しないと見落としがちですが、実はとても重要な読解力の一部でもあります。
そこでおすすめなのが、まずは現代のわかりやすい漫画から、少しずつ慣れていくことです。特にスマートフォンやタブレットで手軽に読める「ジャンプ+(プラス)」のような無料アプリは、豊富なジャンルがそろっていて、自分の興味に合った作品を探しやすいのが魅力です。
たとえば『SPY×FAMILY』では、登場人物それぞれの立場や心情を想像しながら読む力が自然と身につきます。『怪獣8号』や『地獄楽』のような作品では、緊張感のある展開の中で登場人物の行動や背景の意味を読み取る力が育ちます。これらの漫画を通して、「絵とことばの両方から物語を読む力」を養うことができるのです。
こうしたステップを踏んでいけば、やがて『あさきゆめみし』や本物の源氏物語に挑戦するときにも、スムーズに物語の世界に入っていけるはずです。
5. 読解力を育てる、おすすめの漫画たち
では、具体的にどんな漫画を読めば「読む力」がつくのでしょうか? ここでは、私が生徒たちに勧めたいと思っている作品をいくつかご紹介します。もちろん、どれもジャンプ+などのアプリで手軽に読むことができます。
まずは『SPY×FAMILY』。スパイの父、超能力者の娘、殺し屋の母という一風変わった家族の日常が描かれています。一人ひとりの心の声や、本音と建前のズレに注目しながら読むと、登場人物の気持ちを深く読み取る力が自然と鍛えられます。
次に『怪獣8号』。怪獣と戦うというシンプルなテーマながら、登場人物の内面や過去に触れる場面も多く、ストーリーに深みがあります。キャラクターの行動の裏にある動機や感情を読み取る力が求められます。
また、少し大人っぽいテーマに触れたいなら『左ききのエレン』もおすすめです。芸術や仕事に悩む若者たちの葛藤がリアルに描かれていて、セリフの行間を読む力や、複雑な感情を想像する力が必要になります。
さらに、和風の世界観に慣れておきたい人には『地獄楽』もぴったりです。時代設定や文化がやや古風で、感覚的に古典作品との距離を縮める練習になります。
これらの漫画はすべて、ただ読むだけでも楽しい作品ばかりですが、少し意識して「気持ちを読み取る」「場面の意味を考える」などの読み方をすれば、自然と古文にも通じる力が身についていきます。
6. 古文は“物語を読む力”で好きになれる
古文というと、「暗記しなきゃ」「意味調べが大変」というイメージが強くて、つい苦手意識を持ってしまいがちです。でも本当は、登場人物の気持ちを想像したり、人間関係の機微を読み取ったりする、豊かな“読解力”が大切なのだと思います。
そしてその力は、現代の漫画を楽しむ中でも、しっかりと育てることができます。最初は単純に「面白そう」と思える作品からでかまいません。絵やセリフから登場人物の気持ちを感じとることに慣れていけば、いずれ古典の世界にも自然と入り込めるようになります。
古文が苦手な生徒たちへ。「難しい」と感じるのは、あなたのせいではありません。まずは、物語を楽しむ力を育てるところから始めてみましょう。そしてその第一歩に、漫画という頼もしい味方を使ってみてはいかがでしょうか。
もしかしたら、その一冊が、あなたと源氏物語をつなぐ扉になるかもしれません。